メディア芸術コース2024パンフレット|多摩美術大学
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i』Meda2020年に入学した私達は、コロナと共に大学生活を送ってきた。2023年現在、コロナはインフルエンザ等と同じ5類感染症へ移行し、ただの風邪扱いになった。入学してから当たり前のようにあったマスクを外し、パーテーションや消毒液は撤去され、パンデミックは遠い昔のように社会は回り始めている。 社会では、疫病や震災などは忘れるのが悲しみを乗り越えた証のような風潮がある。 撤去された感染防止グッズのように、学校へ行けずコミュニケーションもできず、死への恐怖でひたすら家に篭っていた2020~2022年の私も無かったことにされてしまうのではないか。 透明人間にされた過去の私は、私の中でまだ生きている。[インスタレーション]メディアとは、何かと何かを繋ぐもの、そして私たちの思考や表現の基盤となる枠組みです。メディアラボでは、このメディアという普段は意識し難い何ものかに着目し、その歴史的な意味や、技術的な可能性、社会的な役割をすることを出発点に、作品制作を行っています。3~4年生のゼミは、共通の課題を設けることなく、学生一人一人が自ら個別のテーマを設定して制作を進めていく、プロジェクト型のアプローチで行っています。作品を作る時に大切なのは、作品そのもの、あるいはその内側を見つめることだけでなく、作品が置かれている状況や文脈、背景としての歴史や社会に目を向けることです。メディアラボでは、現代のさまざまなメディアを批クリティカル評的に交錯させ·変容していくことを通じて、(非)人間や未来(過去)の可能性を、多様な形式で複合的に表現することを目指しています。020405のようなテクスチャは、湿気に大きく左右される。平安時代から幼児の無病息災を祈るために作られたお守りの這子(ほうこ)は、コロナ禍で分断されてしまった人との繋がりを復活させるために現代にやってきたのかもしれない。バイオレザーで這子を縫うことは、コロナの時代を忘れないための儀式ともいえるだろう。行動の自由度が高いオープンワールドゲームでは、しばしば移動手段の方法として崖や壁などを登ることがあるが、この作品はあえて壁を登ることだけに焦点をあてている。刻一刻と変化する過酷な環境のなか、落下の恐怖と闘いながら寡黙に登り続けていく。登攀中、トリガーボタンをずっと押し続けなければならない独特な操作方法も、緊張感と没入感を増幅させている。壁を登るというクリアなコンセプトを高い完成度で仕上げた作品だ。クラウドコンピューティングは、そのハードウェアの所在を、まるで雲隠れさせるかのように、意識しなくても良いものにする。この作品は、このクラウドの技術を用いたGoogleのウェブサービスの海賊版を、クラウド技術を用いずに配信する。Googleを模したページのアイコンやUIの操作が、サーバーであるオブジェクトの動作に置き換わることで、コンピューターの物理的な変化を、目に見える形で体現する。コウ セイショウ0103担当教員:久保田晃弘/谷口暁彦/大岩雄典/小田原のどか/堀口淳史バイオレザーは、発酵飲料から生成される食物繊維を乾燥させた素材である。人間の皮膚02『not only breathing with』[インスタレーション]私たちの日常生活において、緑藻の存在を意識することは少ない。これは、人間の呼気と緑藻の光合成を利用した、生きた酸素生成装置である。人が緑藻に息を吹き込むことで、その二酸化炭素が緑藻に取り込まれ、その一部となる。しかしその緑藻も、230度に加熱されたプレートの上で瞬時に蒸発してしまう。持続的な物質循環の中で、私たちは他の生物と相互依存しながら複雑な生命共同体を形成している。03大浦心愛 『皮ひ膜まく這ほう子こ[インスタレーション·立体]04『ペイルトピア/Paletopia』[ビデオゲーム]05『偽Google@uncloud-computer.net』[インスタレーション]メディアラボ亀井里咲 『無題』01Media Lab.3-4年次熊谷颯馬坂田晶

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