メディア芸術コース2024パンフレット|多摩美術大学
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Q 在学中に特に印象に残っている授業やプロジェクトは何ですか?2014年頃、ARTSATという衛星芸術プロジェクトがありました。超小型芸術専用衛星を打ち上げて、宇宙と地球をつなぐメディアアートを制作するプロジェクトです。テクノロジーの普及により、メディアアートの独自性と他の芸術分野の境界が曖昧になりつつある今でも、特徴的なプロジェクトだと思います。Q 現在どのような活動・お仕事をされていますか?現在は、四月からフランスに住み始め、現地のアーティストのアシスタント等をしながら、作品制作をしています。「無垢に自身を再認識する」をコンセプトに、タンポポの綿毛で構築された人工的な動力に拠らないインタラクティブ作品を制作し、現在は心理学や身体をテーマとする作品に注力しています。Q 学生時代はどのようなことに取り組んでいましたか?呼吸の動きを加圧センサーで読み取り、息を吸うと胸部の羽が持ち上がり、息を吐くと羽が下がるように設計されたウェアラブル作品を制作しました。その後、要素を削ぎ落とし、たんぽぽの綿毛を組み合わせて構成し、人が近づいたときに生まれるささやかな風で動くインタラクティブ作「watage」へと進化しました。Q watageではタンポポの綿毛をモチーフに使われていますが、このモチーフに興味を持ったきっかけや、どういったところに惹かれているのか教えてください。開けると音が鳴るロッカーや呼吸と連動する服などのインタラクティブアートを制作していましたが、センサーの故障や電力の供給が途絶えることで、作品が動かなくなり、寂しい沈黙に包まれていると感じたことがきっかけです。そこで、ささやかな風だけで宙を舞う綿毛に惹かれ、電力に頼らないインタラクティブ作品「watage」の制作に至りました。Q 在学生・受験生に向けてメッセージをお願いします。日々変化が著しいですが、時代の流れに乗るも良し、乗らぬも良しです。ただ一つ言えるのは、追求している人々は面白いです。迷いながらも進んだ軌跡は、素晴らしい旅であり、失敗できる人も素晴らしいです。炎上の危険性により萎縮しがちな現代において失敗から学ぶことは貴重な体験です。学生のうちは、治りも早いので失敗と豊かな経験を積んでください。私も多くご指摘をもらいましたが、今となっては大切な思い出です。ありがとうございます!Q 制作する上で繊細なモチーフを扱うのは大変ですか? 制作中のエピソードを教えてください。はい。大変です。できることなら、やめておいた方がいいです。私の作品は、その場の気流によって大きく左右されるので時に展示できないことさえあります。しかし、繊細なものを繊細なまま作品として成立させられた時、それは一つの強さです。それでしか表現できQ 大学生活の中で学んだ一番大切なことはなんですか?自分がクリエイターであるということの自覚です。私は多摩美に入学するまでは世の中のエンタメを受け取る側でしかなく、クリエイトする側に立つなんて思いもしていませんでした。何を作るにしても必ず自分と向き合わなければならないし、どう受け取られるか考えないといけないので、プロ意識を培っていくのが大切だと思います。それが薄い時は大体、満足のいく作品は作れませんでした。Q どのような作品を作っていますか?これまでの課題では、手描きアニメーションを作るのが好きで力を入れてきました。2年時に初めて取り入れたロトスコープは、人間の有機的な動きが見せられるので積極的に使っています。自分の好きな演出や日々の思考が形になり、見てくれる人も同じようにときめいてくれるような映像作品を作ることを目指しています。( )3年次・メディア芸術応用/4年次・メディア芸術総合+卒業制作研究9『Living Fur』当時研究していたウェアラブル作品。Q 自分の所属ラボを選んだ理由はなんですか?自分の映像にインタラクティブな要素を取り入れるといったような、映像を原点に作品の可能性を広げられるのではないかと思い選びました。自分のやりたいことに有効的なアドバイスをくださる先生方がいるのも理由の一つです。媒体をはしごして制作する際に多角的な視点が身につけられると考え、興味を持ちました。Q メディア芸術コースの施設や設備について、どのように感じましたか?現在の設備使用のシステムは定かではありませんが、当時は他の学科からも羨ましがられるほど設備が充実していました。撮影スタジオ、工房、PC、貸し出しカメラ、最新の機器などが揃っており、どのような作品が生まれるかは、これらの設備や制作・展示スペースの広さに左右されます。そのため、充実した設備と広い空間で制作できる環境は非常に恵まれていると感じました。Q 影響を受けたアーティスト、自分を支えてくれているアーティストは誰ですか?美術を勉強し始めた頃に見たシシヤマザキさんのアニメーションがやはりとても好きです。受験期も彼女の動きや色彩に何度もホッとさせられました。やりたい表現が明確にあって、表現者として楽しんでいる点がとても魅力的です。私は自己プロデュースが苦手な方なので、彼女の作品はとても参考になります。Q これからどんな作品を作っていきたいですか?多くの人に見てもらえる作品を作りたいです。映像のコンテストで受賞した作品が駅前のシティビジョンに使用されたことが、それ以前には無かった自分への自信につながりました。私は以前政治経済を学ぶ大学に通っていて、やりたいことなんて特にありませんでした。しかし今はやりたいことがあって、自分のことを形にできる。そんな思いを見る側も感じ取れるような作品を作りたいです。Q ご自身の制作に影響を与えた作品(アーティスト)はありますか?内藤礼です。彼女を思い出さない日はありません。 Q 受験生に向けてひとこと私が美大受験をするとき迷いはありませんでした。確かに、年齢や経験の無さはネックでした。試しにやってみたデッサンで、これだ!と感じ、美術を自分の立ち位置にしたくなったのです。私は自分をさらけ出すのがとても苦手で苦しいと感じていましたが、それらを上回る作りたいという気持ちが成長していると感じます。自分のオリジナルを磨いて、成長を楽しむのが大事だと思います。ないものや繊細な素材を性懲りも無く選択してしまうのも一つの個性だと受け止めて使い続けています。『伝わるよ。』『watage』ゆーぐれな(euglena)さん2017年度学部卒業Future-Labの卒業生に聞いてみましたFuture-Labの在校生に聞いてみましたInterviews木下望有さん3年生

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