版画専攻2023パンフレット|多摩美術大学
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1. 専門的な版画表現/技法を学ぶ2. 先端的な版画表現/考え方を学ぶ3. デザインへの展開を学ぶ《me time Ⅳ》2018、水性油性併用木版画 日中はフルタイム(朝9時〜夕方5時)で働き、帰宅後と休日に制作をするようにしていました。私の場合は、通勤の電車の中で仕事と制作の頭のスイッチが自然と切り替えられました。 そして、版画制作は元々分業制ですので、今日は彫りの作業、週末は■り作業というように作業内容を分けて進められるので企業に勤めながらでも制作を続けやすかったです。 週に5日働いて空いてる時間や休みの日に制作する、これは作家の活動だけで収入を得て生活している作家より制作時間が圧倒的に少ないのです。そのことを自覚して自分ルールを作ることや、締め切りや展示の目標を常に持って制作することもおすすめです。─制作し続けるために大切だと思うことはなんですか? 創作を継続できる環境を整えること、そして材料の安定した調達が一番大切です。 絵画、版画、彫刻、デザインとそれぞれ必要な設備や道具は異なりますが、環境がしっかり整っていないと、状況が変化した際に対処できないことが多くなりますし、丁寧な仕事は出来ません。 日本では大学卒業後に版画を制作できる場所が多くないですが、誰でも利用できる版画工房などを活用することも考えるといいと思います。 また、私は毎日簡単なドローイング(線一本だけ)でもいいので制作に繋がる作業を欠かさずに行い、机に向かうことを習慣づけています。完璧主義にならないことも心がけながら、制作に向けてモチベーションをキープし続けることも大切だと思います。─作家としてのこれからの目標はありますか? 今の私が作家として目指していることは、作品の技術と質の向上です。 木版画技法で挑戦したいことがある、表現したいことがある、制作を続けて納得いく作品をもっともっと作りたい。それがまず最初の部分にあって、全てのモチベーションの根源になっていると思います。 作品に対して自分が貫いている信念があって、それを今は木版画で表現できるようになりたい、もっといい作品が作れるようになりたい。ということが一番の目標です。 また、版画表現の技術や歴史だけでなく、版画がアートの表現メディアであることを発信することも大きな目標です。─版画家を目指す学生にアドバイスはありますか? 何かを描いたり、作ったり、文章を書いたりして誰かに見せることから始めてみてください。 また、作家としてやっていくには自分の考えや個性を作品の中に表現する力が必要なので、常に学びを意識して欲しいです。 街中や自然のなかにもちょっと意識するだけでアーティストとして重要な学びがあります。 私が意識的に実践しているのが、自然の色彩観察や広告観察です。例えば、公園や川辺などの木々の緑、鳥や昆虫などの絶妙な配色を観察しています。また、街中に■れる広告には美しいレイアウトや人の目を引きつける工夫、多くの情報の整理方法を学べます。こんなふうに、街や自然のなかのものを意識して見つめる→考えることで、心地よい形の感覚や色彩感覚、発想力が知らず知らずのうちに養われ、ふとしたときに新しいアイデアが生まれることもあります。 これなら通学中でもいつでも気軽にできますし、高校生、大学生のときから続けていれば、将来的にもきっと役に立つはずです。17木版画で挑戦したいこと、表現したいことがあり、納得いく作品をもっともっと作りたい、それが全てのモチベーションの根源になっている。

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