《iruka series》2021、レーザーカット、アクリル板2021年学部卒業、東京藝術大学大学院進学加藤昌美Kato Masami32 4版種の実習はもちろん、写真や映像を学ぶ基礎授業や、DTP(デジタルによる出版物制作)によるアートブック制作、そして活躍するアーティストやデザイナーの講義などを通じて、アナログ、デジタルを問わず絵画、イラスト、写真、映像、CG、そして立体へと、様々な複製技術による芸術表現の広がりを学びました。こういったことを学ぶごとに当時曖昧だった版画に対する疑問がひとつひとつ紐解かれクリアになっていく感覚がありました。 大学2年生の時にはリトグラフ工房(木版画、銅版画に並ぶ版画の一種)に所属し、ドローイングや本、雑誌の切り抜きをコラージュし、それらを版画にしていました。3年生後期にリトグラフからシルクスクリーン・写真工房に移り、日常的な風景で生じる残像などをモチーフに制作し、この頃からシルクスクリーン制作とは別に石膏や木材などの素材実験も行ったりもしました。理由は何ですか? 人が対象世界を視て、それを像として記憶する時、それは一体どの瞬間を捉えているのか?、そして、記憶される像(過去)と思い起こされる像(現在)との間に違いはあるのだろうか?という問題意識が常にありました。4年生の卒業制作では、瞬間の儚く、刹那的なイメージを捉えることをテーマにしながらも、より具体的な像のあり方も同時に求めていたため、普通に紙に印刷するのでなく、より存在感のある表現方法がないだろうかと考えていました。 そこで■り着いたのが、デジタルの描写イメージをアクリル板にレーザーカッターで切り出す方法でした。デジタルプロセスを通じてレーザーカッターで手で描いた線が機械的に切りとられる様子は、シルクスクリーン版画のそのプロセスと近いのではと考えていたので、違和感なく制作に取り組めました。多摩美の版画:3つの学び─版画専攻を受験した理由を聞かせてください。あるいは受験時に版画のイメージや興味関心はどのようなものでしたか?─入学後、その版画のイメージ、興味関心は変化しましたか?学生時代はどのような作品を作っていましたか?─加藤さんは、卒業制作の際、版画から離れてアクリル板を加工したレリーフ作品に移っていきましたね。そのきっかけ、─卒業後、東京芸大大学院に進学しましたが、学部のときと比較して、制作はどのように変化していますか? もともと油画志望だった私は多摩美のオープンキャンパスに行った際、油画専攻と同じ校舎内にある版画専攻を知りました。当時の版画の印象は、小学生の図工で習った木版画と絵画の複製画しかありませんでしたが、逆に「ここでどのような勉強ができるのだろう?」と関心を持ちました。それ以降、私は図書館やインターネットで積極的に版画について調べて、美術からデザインまで様々なメディアを横断して拡がる版画をもっと知りたいと思うようになり、版画専攻の入試に挑戦しました。Interviewデジタルの授業で新しい技術、ソフトを学ぶことは思考の幅を拡げていくことを悟りました。今後も積極的に新しいことを取り込んでいきたい。
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