《StreetPassCommunication》2021、UVインク、レーザーカット、アクリル板331. 専門的な版画表現/技法を学ぶ2. 先端的な版画表現/考え方を学ぶ3. デザインへの展開を学ぶ 学部で、過去と現在の像のあり方の違いを問題にしていましたが、それらに未来の軸も加えています。つまり過去と現在からその先の未来の像を予測しながら描いていて、過去、現在、未来という3つの時間軸を統合しながら制作しています。黒色の線描によるアクリル板にUVプリンター(紫外線でインクを硬化させる特殊なインクジェットプリンター)で色面印刷を加えることで、時間軸の位相を複雑に構成しようとしています。─多摩美で学んだことを今の制作に活かせていますか? 多摩美で培ってきたことは現在、私の制作の基盤になっています。版画専攻の豊富なカリキュラムで色々なことを学べたことはもちろんですが、他学年と交流できる制作工房や学生にとって身近な研究室などの環境面での影響がとても大きいです。たとえば、学年ではなく、制作する版種で工房は分かれているので、同じ版種を選択する上下級生との交流が日常的にあります。また研究室では、多くのアートブックや美術雑誌などを閲覧できるので学生は入室しやすく、気軽に研究室の教授や助手さんたちに相談ができます。こうしたカリキュラムと教育環境面があってこそ、興味関心のあるものへの探究心やコミュニケーション能力を養うことができたのだと思っています。その他、技術的なことで言えば、デジタルの授業も有益で、新しい技術、ソフトを学ぶことは思考の幅を拡げていくことを悟りました。今後も積極的に新しいことを取り込んでいきたいです。 私の場合、大学院から新天地で1からのスタートとなった訳ですが、多摩美でのこうした経験があったからこそ、ポジティブに前進することができていると思います。─大学院進学を目指す後輩にアドバイスをお願いします。 学部4年生の春、大学院に進学したい気持ちは漠然とありつつも、修了後に大きな目標や計画がある訳でもなかったので、半ば諦めて就職活動を始めていました。しかし卒業制作を進めていく中、もっと制作をしたいという気持ちが強く募ってきて、諦めかけていた進学を改めて決意するようになっていました。不安や焦りもありましたが、身近な教授や助手さんたち、親しい友人たちと何度も相談をしていくうちに決心できるようになっていました。もし当時、誰にも話さず、1人で思い詰めていたら進学の決意はできなかったと思います。 作りたい気持ちが少しでもあり、周りの応援があるならば、積極的に制作し、自信を持って大学院受験に挑戦してください。やりたいことは恐れることなく、どんどん挑戦していくべきだと私は思います。
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