学科の枠を超えて、映像表現の世界で活躍する多摩美の卒業生たち

日々進化し続ける映像表現の世界でいま、多くの多摩美卒業生が活躍しています。多様な映像分野で、世の中に影響を与える作品を生み出す視点と思考は、どのように鍛錬されたのでしょうか。第一線で活躍する卒業生たちの作品を紹介するとともに、「多摩美における映像への入り口」についてお話をうかがいました。

TAMABI e-MAGAZINE 2019.10.01

MUSEE「2018 MUSEE ALWAYS FRESH」CM監督/
RADWIMPS「Shape Of Miracle」MVディレクター

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林響太朗さん 13年情報デザインコース卒
DRAWING AND MANUALに参加し、映像作家/撮影監督/写真家/アーティストなどとして活動。近時は「adidas Running | ALPHABOUNCEBEYOND」日本版などを手掛ける。ヴェネツィアビエンナーレ特別賞受賞。

「学生時代に得たことは、良いものを見る、感じることのできる『時間』『環境』がたくさんあったことです。直接的には『グループワーク』の授業が、また、授業にかかわらず有志の集まりなども、今の撮影現場などにすごく生かされていると感じています。監督という立場で何をすべきか、どういう立ち振る舞いをするべきか。一つのプロジェクトを進めていくことを学んだ気がします。それを教えてくれたのは宮崎光弘教授を筆頭に年間を通して気付きをくれた教授、講師陣だと、卒業してからよく感じます。社会に出たら『時間』が極端になくなっていきます。時間をかけて何かをできるのは今だけかもしれません。今の『時間』を大切にいろんな人と楽しんでほしいです」

MUSEE 「2018 MUSEE ALWAYS FRESH編」
RADWIMPS 「Shape Of Miracle」

NIKE「NIKE AIR MAX DAY 2018」インスタレーション参加アーティスト/
NHK Eテレ「ニャンちゅう!宇宙!放送チュー!」アニメーション制作

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持田寛太さん 16年メディア芸術コース卒
映像作家/フリーランスのジェネラリストとして活動。実写映像、3DCGなどの映像制作を中心に、インタラクティブアートやインスタレーションの制作も行う。

「映像をやりたくて、多摩美に入学しました。そこで久保田晃弘先生と出会い、考えや行動、実行力、アカデミックな環境ならではの社会とのコネクションといった意味で、多くの言語を学ばせてもらいました。映像全盛期時代で、3DCGもノートPCで作れてしまうこの時代。技術やビジュアルはもちろん必要ですが、それ以上に大切なのは絵に落とし込む前の発想や考え方、これが優れていないと面白いモノは生まれないと思います。技術を教えられて育った学生よりも考え方を植え付けて育った学生の方が、今の時代一番輝ける逸材になるでしょう。学ぶ環境は一番大切だと思います。自分にとって素晴らしい環境だったと今でも思います」

NIKE「NIKE AIR MAX DAY 2018」
NHK Eテレ「ニャンちゅう!宇宙!放送チュー!」

映画「黒執事」監督

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大谷健太郎さん 89年芸術卒
在学中、映像演出研究会で製作した8ミリ映画「青緑」が1988年のぴあフィルムフェスティバルに入賞。1991年に「私と他人になった彼は」で同3部門を受賞。1999年「avec mon mari アベックモンマリ」で劇場用映画デビューを果たす。「約三十の嘘」(2004年/監督兼共同脚本)、大人気漫画の映画化「NANA」(2005年)など。
映画「黒執事」
ブルーレイ&DVD好評発売、レンタル中/デジタル配信中/セル発売、販売元=エイベックス・マーケティング/レンタル発売元=ワーナー・ホーム エンターテイメント/©︎2014 枢やな/スクウェアエニックス/©︎2014 映画「黒執事」製作委員会

GRAVITY CAT「GRAVITY DAZE 2 GRAVITY CAT 重力的眩暈子猫」映像監督

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柳沢翔さん 05年油画卒
絵画とアニメの技法をベースとした映像表現で、CMを中心に活動。2016年「星ガ丘ワンダーランド」で映画監督デビュー。2015年、資生堂「High School Girl?メーク女子高生のヒミツ」、任天堂「Pokémon GO」、2017年"重力猫"ムービー「GRAVITY CAT」など、手掛けた作品はネット動画再生数でも話題に。
GRAVITY CAT「GRAVITY DAZE 2 GRAVITY CAT 重力的眩暈子猫」

サカナクション「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」MVディレクター/
OK Go「Obsession」MVディレクター

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田中裕介さん 01年グラフィックデザイン卒
CAVIAR所属。秀逸なデザインセンスと映像制作のスキルに遊び心を加味した独創性を武器に、多くの話題作を手掛け、CMやMusicVideoの映像演出を基軸に、グラフィックデザイン、アートディレクション、舞台演出など、その活動の幅は多岐にわたる。

「専門的な知識や技法だけでなく、現在の制作活動において、地下水のように脈々と流れている根本的なこと。それは、当時自分と同じように迷いそして未完成な表現者がたくさんいて、その中に社会的な経験を多く積んだ表現者がいるような環境に身を置き、そこで自分が浴びた情報や刺激を受けて昇華させ構築されていった、表現する上での基本スタンスみたいなものです」

サカナクション「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」
OK Go「Obsession」

「つみきのいえ」「情景」アニメーション制作ほか

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加藤久仁生さん 01年グラフィックデザイン卒
アニメーション作家。2009年に短編アニメーション「つみきのいえ」で第81回アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞。ほか絵本、イラストレーションなどを制作している。

「3年で故・片山雅博先生に出会ったことが大きいです。授業では世界中のアニメーション作品を浴びるように観て、年代ごとに細かな解説つきでその広大さを知りました。例えば好きなバンドを見つけたらまず楽器で真似てみるように、アニメーションも手取り足取り習うものではないと思います。自身で試行錯誤しながら作っていく、その過程自体が重要な気がします」

「つみきのいえ」
「情景」

きゃりーぱみゅぱみゅ「ふりそでーしょん」MVディレクター/
SEKAI NO OWARI「RPG」MVディレクター

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田向潤さん 05年グラフィックデザイン卒
映像ディレクター/グラフィックデザイナー。きゃりーぱみゅぱみゅのMVを多く手がけるほか、くるりやSMAP、SEKAI NO OWARIのMV、ヤフオク!、レオパレス21、Newニンテンドー3DSのCMなどに携わる。

「社会におけるクリエイティブな仕事とは、全て『デザイン』と言える。そのような意味で、多摩美での学びは映像というフィールドでも常に生きています。在学中は手を動かすよりも『デザインとは』みたいなことを考えており、そして先生方はそんな学生たちに真摯に向き合い、デザインの本質を説いて下さいました。技術を教えるよりはるかに大変な教えかもしれません」

きゃりーぱみゅぱみゅ「ふりそでーしょん」
SEKAI NO OWARI「RPG」

「映画クレヨンしんちゃん 爆盛! カンフーボーイズ ~拉麺大乱~」エンディング作画ほか/
Cuushe「Butterfly Case」MVアニメーション制作ほか

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久野遥子さん 13年グラフィックデザイン卒
アニメーション、漫画を中心に活動。Eテレ「人形劇ガラピコぷ~」OP、岩井俊二監督作「花とアリス殺人事件」、TVアニメ「宝石の国」のスタッフ参加など。2017年初コミックス「甘木唯子のツノと愛」を刊行。

「広告やアニメーションの授業など、私が選択した授業は『自由に作って良い』という課題が多かったことが良かったです。現在携わっている仕事は商業的なものが多いのですが、そういった現場で、技術も経験も足りない自分がなんとか席を置かせてもらえる理由は、学生の時に自由に作れた体験やそれを認めてもらえた瞬間が生きているのではないかと思います」

「映画クレヨンしんちゃん 爆盛! カンフーボーイズ ~拉麺大乱~」©︎臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2018
Cuushe「Butterfly Case」

【コラム】『映像作家100人 2018』に、多数の多摩美卒業生が登場

毎年、優れた映像作家を100人選出する「映像作家100人2018」(株式会社ビー・エヌ・エヌ新社)に、情報デザインの谷口暁彦講師をはじめ、時里充さん、ひらのりょうさん、衛藤隆世さん、冠木佐和子さん、ぬQさん、山田遼志さん、佐伯雄一郎さん、代田栄介さん、稲葉まりさん、北村みなみさん、岸本威さん、AC部、持田寛太さん、でんすけ28号さん、久野遥子さんら多数の多摩美卒業生が選ばれ、紹介されています。
特設サイト https://eizo100.jp/

※本記事は2018年6月7日発行「TAMABI NEWS77号」に掲載した内容を再編集したものです。

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