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統合デザイン学科の学生・卒業生が、世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」に出展

世界各国のデザイナーや大手家具メーカーなどが数多く出展し、毎年30万人を超える来場者が訪れる家具見本市「ミラノサローネ」。その中で行われる、厳正な審査によって選ばれた若手デザイナーらによる展示「サテリテ」に、統合デザイン学科の学生と卒業生からなるクリエイティブユニット『BRANCH』が、独自にデザインした充電式のLED照明器具『dot.』を出展しました。現地での高評価を受け、世界6カ国11のメーカーから製品化の問い合わせがあり、現在はグローバルブランドからの製品化に向けて開発活動を継続しています。



「サテリテ」は厳正な審査によって選ばれる、若手デザイナーの登竜門

イタリアの家具工業会社 Federlegno Arredo Eventi Spa が運営するミラノサローネ(正式名称: Salone del Mobile.Milano)は、1961年にイタリア家具やインテリア小物の輸出を促進するために誕生した家具の見本市で、毎年4月に開催されています。1967年より海外からの出展者も招き入れるようになり、現在は世界各国のデザイナーや大手家具メーカーなどの企業が数多く出展。6日間の会期で30万人を超える来場者が訪れる世界最大規模のイベントです。

ミラノサローネを構成する要素の一つである「サテリテ」は、35歳以下のデザイナーによる展示で、若手の登竜門とされています。ミラノサローネに出展している企業が新たな才能を発掘する場でもあり、若手デザイナーにとっては自分の存在を最大限にPRできる場所とあって、毎年世界中から数多くの応募が寄せられます。しかし、サテリテに展示できるのは事前に行われる厳正な審査を通過したデザイナーのみ。

BRANCHは2018年2月の結成以降、常にグローバルなフィールドからの発信を念頭に置きながら活動を続けています。その活動の中で日本国内の照明メーカーの社長やイタリアでデザイン産業に携わる人と出会い、助言や協力を得ながら、このサテリテへの出展を目指すことを決意し、本格的にプロトタイプやポートフォリオ作成に取り組みました。

そうして難関を突破した作品が、今回出展されたプロダクトデザイン『dot.』です。

▲ BRANCH 出展ブース / ミラノサローネサテリテ2019
▲ BRANCHが開発したアンビエントライトシリーズ『dot.』

小さな7つのひかりとかたちでAmbience(周囲、環境、雰囲気)をつくるAmbience Light series

『dot.』 には「置く」「点在する」という意味があります。リビングやベッドサイド、窓辺や棚やカウンターなど、生活の中の様々な場所にひかりを置き、小さな点在するひかりとかたちでAmbienceを作ります。

照明器具としての物質や環境を照明するというひかり本来の機能と共に、ひかりが灯らない時にもそれぞれの「かたち」「彫刻」としての機能が空間の調和、Ambienceを生み出します。

充電式でコードレスなので、場所を選ばずに持ち運ぶことが出来るこのモノたちは、私たちの生活の中で環境とモノやひかりの新たな関係性を提供します。

▲ それぞれ高さの違う台を中央に配置し、ベッド、机、カウンターなど、来場者が自宅の家具を思い浮かべ『dot.』をどう使うかをイメージしやすいようにした。美術館で絵画を鑑賞しているかのような展示設計もBRANCHによるもの。

BRANCHは今回のサテリテの展示で、『dot.』の多様な用途を示すだけでなく、デザインでモノと人との新しい関係性を作ることへのアプローチを試みました。

『dot.』を軸に、紙やWEBなどを媒体としたグラフィックデザインやコミュニケーションのデザイン、SNSを活用したアニメーションや動画のデザイン、展示会場の構成デザインなど、一貫して統合されたデザイン活動を、世界の舞台で実践したのです。

その結果、『dot.』は現地でも高評価を受け、世界6カ国11のメーカーから製品化の問い合わせがありました。現在はグローバルブランドからの製品化に向けて、開発活動を継続しています。

▲ 『dot.』のプロトタイプ計7種を展示したBRANCHのブースには、連日、多くの人々が訪れた。

小さな枠にとどまらず、常に世界を見据えた活動を展開

BRANCHという名前には「枝が伸びる、拡張する、分化する、支店」という意味があります。世界的な視野に立ち、新たなデザインの潮流を生み出す存在になりたいという意思や想いが込められています。

将来的にはBRANCHを在学生だけでなく卒業生も含め、統合デザイン学科で育まれた優れた才能が自由に集まることができる求心力を持った「創造の場・ブランド」にするという方針、構想のもと活動を行っています。

アート、プロダクト、グラフィック、スペース、映像など、領域を分けない統合デザイン学科の教育の強みを生かし、プロジェクトごとに自在にチームを編成しながら、自分たちの力を発揮できる複合的なコンテンツを出していく場や自在な集合体にしていくことを目指しています。

※情報は2019年10月取材当時のものです。


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