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AI技術を採用することで、作品の本質的なテーマに迫る

雨宮 庸介(99年油画卒業、油画専攻非常勤講師)


▲“We 19 March,2010 - We 4 July, 2010”
Yosuke Amemiya, Roppongi Crossing 2010
撮影=夏原 新(Shin Natsuhara)

※本記事は2019年12月24日発行「TAMABI NEWS 84号」に掲載した内容を再編集したものです。

人間にとってテクノロジーは回避できない『自然』

彫刻、ドローイング、ビデオインスタレーション、パフォーマンスなど多彩な手法を用いて、「境界」や「普遍性」をテーマに作品を制作している雨宮さん。今秋、青森県立美術館で開催された『いのち耕す場所』展における、最新作『普遍的なりんごを探してみる』プロジェクトは、最先端テクノロジーであるAIを用いた、これまでにない新たな取り組みに挑んだものだ。

「この20年間ぐらいを考えると、昔の人が『自然』に関わることが『不可避』であったのと同じぐらい、僕らの生活においてインターネットやAIのテクノロジーはすでに広大な『自然』。それゆえに『不可避』であり、今後さらにそれらは加速するはずです。ただ、現時点でりんご彫刻を制作するとなると、僕の頭の中で行うデータベースの構築作業や手作業でつくりだすりんごの肌理(きめ)など、全てにおいてAIよりも僕のほうが処理速度や解像度は高いと思っています。しかし、近い将来、AIとインターネットと3Dプリンターの組み合わせのほうが、あっという間に追い越していくはずです。その時に人類の未来について、より面白がれる準備をしておきたいというのが、今回AIを使おうと思った最初の動機でした」

作品テーマによって手法を変える雨宮さんにとって、AIという最先端テクノロジーの活用は、未知なる「自然」の中で行う「実験」であり、新たな表現を模索する「挑戦」に違いない。


雨宮 庸介
雨宮 庸介

現代美術家。2011年に渡欧し、2013年にオランダのサンドベルグ・インスティテュート修士課程修了。現在はドイツのベルリンを拠点にアーティスト活動を行っている。


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