シリーズ累計販売約1000万本突破、
『スプラトゥーン』の世界観全体のデザインを担う

任天堂に入社後、『どうぶつの森』『ゼルダの伝説』といった人気タイトルで経験を積み、『スプラトゥーン』ではディレクターとして活躍する井上精太さん。「多摩美での修行のような2年間」さながら「どんどん描いて提案するというスタイル」で、キャラクターを含むデザインほかイラストレーション等の広報的なビジュアルも手掛ける井上さんに、お話を伺いました。(2018年9月14日発行「TAMABI NEWS78号」より)

TAMABI e-MAGAZINE 2019.07.06

井上さんはグラフィックデザイン学科を卒業後、任天堂に入社。『どうぶつの森』『ゼルダの伝説』といった人気タイトルで経験を積み、シリーズ累計販売1000万本を突破した『スプラトゥーン』では、構想時より参加しアートディレクターとして関わり、その世界観を構築しました。学生時代から今に至る経緯と、ゲーム作りの面白さ、人気タイトルのディレクターとしての思いなどを語っていただきました。

社会実践と基礎訓練を両立した学生時代

私は京都出身なのですが、多摩美で学びながら企業のインターンなどに参加して実践の中でデザインを体得したいと考え、入学を機に上京しました。そこで、当時任天堂が週1で実施していたゲームセミナーに、大学1年生の時から参加しました(※現在は行われておりません)。その授業でゲームを作った経験が面白く、大学1年の6月ぐらいには志望先として決めちゃいました(笑)。

多摩美では、1、2年生の基礎授業で行った、ひたすら絵を描き講評会で評価されるという修行のような2年間が大きかったですね。品質的に自分で納得いかない状態であっても2週間ペースで出さねばならない、量をこなさねばならないという繰り返しが、何より力になりました。でも練習は好きなので全然苦ではありませんでした。継続して描けばうまくなりますから、単純に楽しかったですね。授業課題以外はセミナーに打ち込む、ストイックな学生でした(笑)。

▲『スプラトゥーン2』カウントダウンビジュアル

どんどん描いてアイデアを提案

入社後は『街へいこうよ どうぶつの森』を担当し、虫と魚のデザイン制作を通してゲームに必要な様々な要素を学びました。その後『ゼルダの伝説 大地の汽笛』で、メニューやアイコン部分のデザインを担当。自分の担当領域以外にも汽車などのアイデアを提案し、採用してもらいました。『スプラトゥーン』もそうなのですが、当社は職種に関わらず随時いろんな人からアイデアを募集しているので、僕はどんどん描いて提案するというスタイルで今に至っています。現在は『スプラトゥーン2』のディレクターを担当しています。イラストレーションやコンセプトアートを描いたり、その世界観やルールを決めるなど、チームメンバーが良いと思う提案をラインを守って決めていくような仕事です。僕はそのとき、「各自が一番こだわりを持っている部分を出して欲しい」と言っています。例えば靴が大好きだというデザイナーがいれば、靴のデザインはその人に任せるのがいい。

またゲームは、キャラクターのデザインや設定の魅力も大事ですが、その前に遊びとしての面白さがまずあり、そのための企画自体を考えることがゲーム作りの面白さでもあります。『スプラトゥーン』ができる過程も同じで、世界観として、"イカ"を定義して仕上げていくことは、単に見た目を作る作業とは違って、要素を整理していくようなもの。こうした情報を組み立てる作業も、デザインの本質的なところだと思っています。美的であっても、機能的であったり、ユーモアもなければユーザーはプレイを続けてくれません。

▲左=設定資料集の『イカすアートブック』(角川出版)。ゲームの世界をより深く理解できるだけでなく、クリエイターがキャラクターや世界観を設計する参考資料としても使える。 右=公式グッズの『クロッキー帳』 「美大生御用達のアイテムとして、これができたときはちょっと感慨深かったです(笑)」

クリエイターを目指す後輩たちへ

ありがたいことに、『スプラトゥーン』に影響を受け入社を希望してくださる人が増えています。その中から突然変異的に"すごい人"が誕生してほしい。アートブックを作ったのはそのためでもあります。僕も高校時代にひたすら資料集を読み込んだ経験があるので、これから出てくる"すごい人"と一緒に何かを作るのは面白いだろうなと、楽しみにしています。

▲『スプラトゥーン展×タワーレコード渋谷』の様子 7月13日〜8月5日まで開催された展示会。「自分がよく通っていた場所で展示ができるという、そのループしていく感じが心地よかったです」。

【コラム】任天堂では、他の有名タイトルでも多数の卒業生が活躍中

『スプラトゥーン2』に登場するキャラクター「テンタクルズ」をデザインしたのは、本多梨奈さん(15年情報デザイン卒)。他にも、通称"イカフォント"と呼ばれるロゴタイプを作った橘磨理子さん(12年グラフィックデザイン卒)など、多くの卒業生がスプラトゥーンに関わっています。スプラトゥーン以外にも、『Nintendo Labo』のアートディレクター、正木義文さん(05年グラフィックデザイン卒)、『スーパーマリオ オデッセイ』のディレクター、元倉健太さん(00年クラフトデザイン卒※現・工芸)など、任天堂の開発部署では多くの卒業生が様々な分野で活躍しています。

▲正木義文さんのNintendo Laboのデザイン素材

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