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個性派漫画家が次々と生まれる場所②漫画家を目指す・漫画表現を追求する学生たち

多摩美には漫画を専門とする学科はありませんが、個性派漫画家が続々と生まれています。名だたる作家たちを輩出した伝統あるサークルや表現の一つとして漫画制作を行う研究会、すでに商業誌でデビューを果たし連載を目指して漫画制作に励む学生など、枠を超えて刺激し合いながら漫画家を目指す、あるいは漫画表現を追求する学生たちの様子を紹介します。(2018年10月3日発行「TAMABI NEWS79号」より※文中に登場する数字・肩書・学科名などの情報は取材当時のものです)


【上段左から】
『チャンネルはフテネコのままで』(株式会社KADOKAWA)04年映像演劇卒・芦沢ムネトさん、『海獣の子供』(小学館)93年油画卒・五十嵐大介さん、『阿・吽』(小学館)90年グラフィックデザイン卒・おかざき真里さん、『きみはペット』(講談社)小川彌生さん、『ダーリンは外国人』(株式会社KADOKAWA)89年グラフィックデザイン卒・小栗左多里さん、『無限の住人』(講談社)93年油画卒・沙村広明さん
【下段左から】
『じゃりン子チエ』(双葉社)油画卒・はるき悦巳さん、『真夜中のヒゲの弥次さん喜多さん』(株式会社KADOKAWA)81年グラフィックデザイン卒・しりあがり寿さん。『弟の夫』(双葉社)グラフィックデザイン卒・田亀源五郎さん、『黒鉄・改』(集英社)油画卒・冬目景さん、『帝一の國』©90年油画卒・古屋兎丸さん、『ゼブラーマン』(小学館)88年油画卒・山田玲司さん

多摩美がこれまでに、数多くの有名かつ個性的な漫画家を輩出してきたその背景には、多摩美での多様な学びと、枠を超え刺激し合える出会いが息づいています。伝統ある漫画サークルや研究会と、すでに商業誌連載を果たした学生へのインタビューを紹介します。

名だたる作家たちを輩出した、伝統あるサークル「漫画部」(旧・漫画研究会)

漫画部(旧・漫画研究会)の歴史は古く、1976年の発足以来、しりあがり寿さん、喜国雅彦さん、山田玲司さんをはじめ、数多くの有名かつ個性的な漫画家を輩出してきました。「漫画業界を目指す人はもちろん、イラストレーターを目指す人や、また最近はプロにはならなくても表現を発信する手段はありますので、各々の表現手段のひとつとして『漫画』を追求しています。現在漫画部には41名が所属し、年2回部誌『タンマ』を発行して「コミックマーケット」で販売しているほか、描く以外にも著作権に関する知識や技術面の情報交換を行っています。部員たちの専攻は油画や彫刻、デザイン系など様々なので、垣根を超えた情報収集の場ともなっています(漫画部部長・グラフィックデザイン2年・泉希しのっ☆さん)」。

▲部誌『タンマ8号』1983年(左)、部誌『タンマ9号』1984年(中)、部誌『タンマ41号』2018年(右)

上野毛キャンパスで活動「ストーリー表現研究会」

「ストーリー表現研究会」は上野毛キャンパスで統合デザイン学科1期生(2014年設立)が立ち上げたまだ新しい研究会で、表現の一つとして漫画制作も行っています。現在会員は16名で、昨年に続き今年も芸術祭に出展予定です。

▲芸術祭では、一枚絵や絵本、漫画、アニメーションなどを展示。

商業誌連載を目指す、学科を超えたコミュニティ
学生漫画家にインタビュー

すでに商業誌でデビューを果たし、日々漫画制作に励んでいる学生がいます。多摩美にいながら漫画を描き続けることについて、「まわりがみんな当たり前に創作活動を行っているので、堂々と描いて、人に見せることが恥ずかしくないというのはほかでは得られない環境」、「課題制作と漫画は、見せ方や構築の仕方など、考え方が似ています。両立するというか、補完し合っているような関係です」とのこと。次のステップは、商業誌での連載だと語る4名の学生漫画家にお話を伺いました。

▲少年サンデーS 10月号(小学館)『REASON』

グラフィックデザイン3年 茂木ヨモギさん
『少年サンデーS』に掲載され、現在は連載準備のため修行中です。初めて編集者の方に会う日は緊張して、授業後に竹熊先生を呼び止め心構えを伺いました(笑)。私のジャンルはスポーツ漫画ですが、いつか読者の方から「作品をきっかけにスポーツを始めました」と言われるのが夢です。


▲少年ジャンプ+(集英社)『Liar's』

ディア芸術3年 星ノ谷圭さん
漫画以外にも広く興味があったのですが、私が選んだメディア芸術が映像やアニメーションなど幅広く学べる学科だったので、その中で「自分はこの先、漫画がやりたい」と考えるようになりました。最近『少年ジャンプ+』でデビューしたばかり。早く「知らない人はいない」というような作家になりたいです。


▲少年サンデーS 5月号(小学館)『恒久サバイバル』

油画4年 小川慧さん(鑓水トキワ荘)
絵に携わりたくて入学しましたが、竹熊先生の「漫画文化論」ですでに商業誌でデビューしていた学生の存在を知り、「悔しい !」と火が付きました。そこから漫画に没頭し、『少年サンデーS』でデビュー。次の掲載予定もあります。早く単行本を出して、書店に平置きされたところを見たいです。


▲少年サンデーS 10月号(小学館)『消えた生徒会長』

工芸2年 的野安珠さん(鑓水トキワ荘) 
高校生のときに友達の影響で漫画家にあこがれるようになり、受験勉強しながら持ち込みをしてましたね(笑)。立体物が好きで多摩美に入りましたが、今は明確に漫画家を目指し、先日『少年サンデーS』でデビューしました。まずは連載を目指し、センターカラーを飾りたいです。

※小川さんと的野さんが所属する「鑓水トキワ荘」は、昨年発足した、本気でプロ漫画家や編集者を目指す集団です。情報交換しながら漫画制作を行うほか、芸術祭への出展などを行っています。