TVアニメ『ポプテピピック』などで話題となった
「AC部」公開インタビュー

漫画やCGを使った映像でPR動画やMVを手掛け、TVアニメ『ポプテピピック』内コーナー「ボブネミミッミ」で話題を呼ぶなど、今最も注目を集めているクリエイティブチーム「AC部」。1999年、本学グラフィックデザイン学科在学中に結成した、安達亨さん、板倉俊介さんによるクリエイティブチームで、ハイテンションで濃厚なビジュアル表現を持ち味に、多数の話題作を生み出し話題を集めています。2018年5月に八王子キャンパス共通教育棟にて行われたお二人の公開インタビューには、平日午後にも関わらず100人以上の学生が集まりました。当日の模様をご紹介します。

TAMABI e-MAGAZINE 2019.09.24

AC部
左から安達亨さん、板倉俊介さん
(撮影=高橋聖英)

「何か面白いことをやりたい」という思いで、
いろんな模索をしたことが今につながっている(安達さん)

─2000年にグラフィックデザイン学科を卒業した二人。AC部誕生から、今の映像制作につながる過程を教えてください。

安達「僕はもともと漫画家になりたくて美大を選んだのですが、周りはみんなうまくてカッコイイものを描ける人ばかり。ただうまく描くのでは勝てないな、と。そこからだんだん、当時メンバーだった安藤くんと僕たちの3人で、何かしてやろうという思いから『ちょっとおかしなこと』をやり始めたのが2年の終わり。普通の私服を着ていたモデルさんを描くとき、なぜかつい学ランにしちゃったり(笑)」

板倉「勝手に空港って設定して、モデルの背後に飛行機飛ばしたり(笑)」

安達「すると講評で並べたときに、みんなからクスクスって笑いが起こって、どんどん楽しくなってきて。もちろん最初は自分が何をどうやっていけばいいかなんて分からなかったけど、いろんなことを試しているうちに、『何か違和感がある』『気になるもの』を強く意識し始めるようになったんです。3年次に映像のコースを選択したら、さらに楽しくて。モーショングラフィックス(文字やイラストに動きを加える映像表現の一つ)の課題で作った僕たちの作品を大学の芸術祭に出したことが、不特定多数の人に映像作品を見てもらい反響を得るという意味では、AC部活動の始まりですね」


▲本号の表紙の撮影が行われた共通教育棟3階フロアの窓際スペースは、3年次で『俺は雀鬼』などを披露したのをきっかけに、4年次の芸術祭で『ユーロボーイズ』などの映像作品をループ上映した、思い出の場所。「作品」として見てもらったという意味で、AC部活動スタートの場なのだそうです。「いつも僕たちは行動するのが遅くて(笑)。申請した時には展示スペースが2ヵ所しか残っていなかったんです」(板倉さん)。「たくさんの人が立ち止まって見てくれるのを、影でこっそり見ながら喜んでいました」(安達さん)。結果的には「不特定多数の人の目に留まるフロアで披露できて成功につながった」と、当時を振り返りました。

学生時代、教授から『君たちは、稼ぐことはいくらでもできる』と言われたことが自信になった(板倉さん)


─圧倒的なインパクトを与えた『ボブネミミッミ』。今の作風に至った経緯と、作品にどう挑んだのか教えてください。

安達「今のような絵は、既に学生時代から描いていました。一応美大生でもありますし、下手くそな絵を描くということでかなりの葛藤はあったのですが、でも当時は3人でやっていたということもあって、『自分が描いたんじゃないよ』とだましだまし、程よく責任をなすり付け合いながらやってきました(笑)」

板倉「最近の視聴者はただアニメを見るだけでなく、Twitterで『作画崩壊してる』とか言い合ったり、細かいところを拾って弄ったりと、そういう楽しみ方をしますよね。そんな人たちに『どうもっていけば刺激を与えられるか、びっくりさせられるか』ということを考えました。例えば、すごい声優さんたちが参加している中に自分たちが出るということも衝撃になるな、とか。振り返ってみると、常に周りを見て『この中でどう驚かせようか』といったスタンスは、学生時代から変わらずありました」

安達「ですので、今回オムニバス形式の制作スタイルということにも燃えたのです」

─常に『見る人の目』を意識されてきたのですね。そのほかにも、今も糧になっていることはありますか?

板倉「学生時代のある日、当時の教授に『君たちは、稼ぐことはいくらでもできるよ』と言われたことですね。まだそんなに稼げていないけど(笑)。『そうか、この先明るいんだな』と、パッと目の前が開けた感じがしました。その時は、将来は就職して生活していくというイメージしか持っていなかったのですが、いろんな可能性があると気付かされたんです。卒業後、一度はゲーム会社に就職しましたが、あの時の『君たちは』という強い言葉が自信となり後押しとなって、今に至っているように思います」

安達「とにかく自分たちが面白いと思うことをやり続けてきたってことです。漫画でもイラストでも、ちゃんとやればいずれそれっぽいものができ、うまくできるとうれしくなる。でも、そこで満足するのか、そこから何かないかと掘っていくのかってことですよね。掘ったらそのまま道を進める場合もあるし、そうじゃない場合もある。だけど掘り続ければ、何らかの自分だけの道にいけると今も思っています。AC部だって別に『こんな絵を描きたい』って目指していたわけじゃなく、やり続けてたらここに来ちゃった(笑)」

▲アニメ『ポプテピピック#1「出会い」(2018年)』©︎大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード シュールな内容と今までのアニメのルールを無視した作風や演出で話題となったTVアニメ
─最後に、後輩たちへのメッセージをお願いします。

安達「多摩美で一番良かったと思うのは、周りの空気感ですね。レベルも意識も高い人ばかりの中でどうやっていくかと考える、それだけでも大きな価値があった。切磋琢磨とまでは言わなくても、せざるを得ない雰囲気があった。もしここでの経験がなければ、きっと何もできなかったと思います。
こうしなきゃと思ってもうまくいかない、そんなときちょっと考え方を転がしてみると、急に見えてくることがある。常に工夫を忘れないことですね。意外ととんでもないアイデアって、遠くじゃなくて、すぐ脇にあったりします。僕も常に、いろんなことをやろうとチャレンジしています。種をまきまくって、そこから何かが発芽すればいいなって。挑戦を繰り返すという進め方は、学生時代に培われた姿勢ですね」

板倉「やりたいことがあったとして、それを思い続けていたらチャンスがポンとやってくることがあります。でもそれがチャンスだと気付けるかどうかは、その時頑張っているかどうかによる。では何を頑張るかというと、そこは自分で問い続けなければ出てこない。いつかチャンスがやってきたとき、掴める確率を高めるためにも、頑張って、頑張り続けてください」

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▲AC部の名を一躍有名にしたアニメ『ポプテピピック』。その第7話に登場し、国内外から反響を得た高速紙芝居「ヘルシェイク矢野」の実物を前に、学生からは大きな歓声と拍手が。「実際しゃべりながら動画で撮って、それを見て動きなどを練習します」(安達さん)「観客がジャンプをするという動きでは、手の形にもこだわっています。でも、動画だと意外と目立たずもったいなかった」(板倉さん)と、裏話を語る二人。

【コラム】高校生・在学生からAC部への質問

Q.スケッチブック作品の制作時間を教えてください(情報デザイン・匿名希望さん)
A.3~4日程度です。締め切りに追われながら(笑)。ゴール設定をして制作する進め方は、デザインの学科で課題をこなしてきたスタイルが生きていますね。

Q.影響を受けたものや、キャラクターをデザインする上で気を付けていることを教えてください(高校3年生・ななえさん、掛布さん)
A.例えば劇画漫画であったり、その時々に興味ある漫画を模写して上澄みを手に入れ、ちょっと勘違いした程度に共感しつつも、「なんかおかしいな」というものを作り出そうとしています。例えば"ボブネミ"も、アニメという枠がある中で「どうしたら一番視聴者に刺さるか、違和感が出せるか」ということを考えました。

※本記事は2018年6月7日発行「TAMABI NEWS77号」に掲載した内容を再編集したものです。

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