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日本の有する美観・衛生観念を継承するためのアイデアを具現化するリンレイ×多摩美PBL 「日本のキレイ」 プロジェクト

「日本のキレイ」プロジェクトは、大手ワックスメーカーの株式会社リンレイと多摩美術大学による産学共同研究で、2016年度から実施しています。日本が伝統的に有する美観・衛生観念を世界に誇るべきひとつの文化ととらえ、家庭や社会に普及、継承されていくことを目的に、日本人にとって「キレイ」とは何かというところから問い直し、提案することを目指しています。1月29日、今年度の最終発表会が行われ、リンレイの役員、社員の方々を前に、学生たちが多彩なプレゼンテーションを展開しました。



日本人の「キレイ」をめぐる価値観から問い直す

株式会社リンレイは70年以上の歴史を持つワックス・洗剤製品等のメーカーとして、常に新しい需要開拓を続けています。本学との共同研究は環境デザイン学科が提供するPBL(所属学科や学年の枠を超えて横断的研究や社会的課題に取り組むプロジェクト型授業)※として実施されました。

※PBL・・・Project Based Learningの略

4年目となる今回は、油画、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、環境デザイン、統合デザインに所属する学生22人が受講。この1年をかけて、リンレイ社員の方たちとともに、オリエンテーションやチームディスカッションを繰り返す中で、日本人の「キレイ」をめぐる価値観から問い直し、アイデアをブラッシュアップしました。


道具のデザインからエクササイズまで多彩な提案

リンレイから多くの役員や社員の方が列席して行われた最終発表会で、学生たちは、子どもが楽しんで掃除をすることができる道具のデザインや、からだを鍛えながら心も空間もキレイにするエクササイズ、「心のキレイ」を生み出す仕組みなど、商品の紹介にとどまらない8つのアイデアを提案しました。

その手法も多彩で、スライドや動画で見せるだけではなく、実際に試作したプロダクトやポスターなどを用いたり、独自に考案したキャラクターの着ぐるみを着て紙芝居で説明したり、それぞれの専門分野の知見や技術を生かしたユニークなプレゼンテーションを展開。人が自発的に「掃除がしたい、掃除をしよう」と思えるような工夫が細部まで凝らされていました。

また、それぞれのプレゼン後には質疑応答の時間が設けられ、時にはリンレイの方から鋭い質問を投げかけられることもありましたが、学生たちは論理的に堂々と対応。指導教員を務めた松澤 穣 教授はこうした学生の姿勢を評価し、「プレゼンテーションの練習はできても、質疑応答の練習はできない。根本の議論をひたすら積み重ねてきた結果が出た。アートやデザインだけではなく、アイデアが論理的にしっかりとまとまっていて、それを一人ひとりの学生がしっかりと消化できているからこそ応えられた」と話しました。


学生たちの感性が企業に与えるもの

4年間にわたり本プロジェクトに携わったリンレイ執行役員の内田高広さんも、成果について、「例年にも増して高いレベルのプレゼンテーションで、学生たちの感性から学ぶところがたくさんあった。中には複数年にわたり受講してくれた学生もいて、その成長ぶりを感じることもできた。『日本のキレイ』に真摯に取り組んでいただき心から感謝しています」と話しました。

昨年度の取り組みが3月に実用化(※)

終了後には学生の作品を囲んで、社員の方との意見交換会が行われました。リンレイとの産学共同研究は今回で一区切りとなりますが、昨年度のプロジェクトで学生が考案したイベントがこの3月に実用化される(※)など、今後も協働での取り組みは継続して行われる予定です。

※学生が考案した掃除や片付けの啓発イベントを幼稚園で行う予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から中止となりました。

指導教職員
松澤 穣(環境デザイン学科 教授)
京野 弘一(環境デザイン学科 非常勤講師)
山田 佑樹(環境デザイン学科 副手)

TA
千葉 聡太郎(環境デザイン学科修士1年)

最終提案者
臼井 結那(統合デザイン学科1年)/白柳 錬(プロダクトデザイン専攻1年)/井上 湧滋(プロダクトデザイン専攻1年)/大内田 光(環境デザイン学科1年)/大塩 伝恵(プロダクトデザイン専攻1年)/黒澤 朱莉(油絵専攻3年)/岩熊 萌衣(プロダクトデザイン専攻1年)/加藤 瑠歌(プロダクトデザイン専攻1年)/松原 千夏(環境デザイン学科3年)/長岡 華子(グラフィックデザイン学科4年)


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