プロダクトの学生が東京理科大生と組み
宇宙探査技術を使ったハッカソンで最優秀賞

2021年10月、プロダクトデザイン専攻3年生の加藤瑠歌さんは、東京理科大学主催による「宇宙×ビジネス ハッカソン」に理科大生ら4人の合同チームで挑み、全8チーム中、みごと最優秀賞を受賞しました。美大で唯一の参加者として2週間という短い期間で企画からロボットへの実装までを行った加藤さんに、お話をうかがいました。

TAMABI e-MAGAZINE 2022.02.09

理科大生、東大生、早稲田生に混じって
「どうしてもやりたい」と挑戦した


―― 最優秀賞おめでとうございます。 宇宙×ビジネスハッカソンに参加したきっかけを教えてください。
東京理科大学主催のハッカソンに参加するのは2回目で、前回参加した人向けに案内をもらったのがきっかけです(前回は2020年11月に行われた「東京理科大学EDGE-NEXT事業 アフターコロナハッカソン・フェーズ2」に参加)。もともと宇宙やロボットに興味があり、「宇宙探査技術で地上を救うビジネスアイデア!」というテーマがまさにぴったりでした。大学の産学連携の授業も忙しい時期だったのですが、先生に「どうしてもやりたい」と相談したら「両立は大変だけど、やりたいならやりなさい」と背中を押してもらって参加を決めました。このハッカソンは他大の人とチームを組んで進めるのですが、前回はオンライン開催ということもあって、メンバーとの距離を縮められなかったのが心に残っていました。相手の専門分野や学年などを気にして自分の言いたいことを伝えられないというか。次はもっとうまくやりたいという思いもありました。


―― ハッカソンとはどのようなイベントなんでしょう?
「ハック」というコンピュータ用語に「マラソン」を組み合わせた造語で、決められた時間内に指定されたテーマに沿った企画やプログラム開発を行うイベントです。今回参加していたのは理科大生が多いですが、東大や早稲田大の学生もいました。美大は私ひとりでしたが、音大の方も参加していましたね。「宇宙探査技術を用いて地上の問題を解決し新たなビジネスを創出する」がテーマで、8つのチームに分かれて、2週間でアイデア立案から遠隔探査ロボットのカスタマイズまでを行うものでした。私のチームは理科大の1年生と3年生、それに大学院生の合わせて4人。全員個性派ぞろいだったんです。プログラミングが得意な人、ビジネスコンテスト団体のリーダー、eスポーツの全国大会入賞者といった具合に。私はそんな中にいて、前回悔いの残ったコミュニケーション(の円滑化)を担当しようと、みんなが意見を言いやすい雰囲気づくりを心掛けていました。


―― 受賞したのはどのようなアイデアですか?
「遠隔サファリパーク」といって、動物園内で過ごす動物のストレスと、人が普段の生活で感じるストレスを一度に解決するアイデアです。動物が実際に起こす行動パターンをヒントに、宇宙探査技術を結びつけました。今回のハッカソンの期間は2週間でしたが、このアイデアに行きつくまでに1週間もかかってしまい、残り1週間で遠隔探査ロボットにそのアイデアを実装して動かすところまで仕上げないといけなくて、それが大変でした。

動物が起こす行動パターンによって、遠隔でも無理なくエサをもらうことができるシステムを実装した「遠隔サファリパーク」。宇宙探査技術を応用している。


――「ハプニングと奇跡」の連続だったとか。
私が作ることになった装置は、考えた構造が複雑すぎたらしく、メンバーから「これを1週間で作るのはとても無理!」と言われてしまいました。でも普段は寡黙なメンバーが「できる!」と力強く言って一緒に考えてくれて、結局、構造を単純化することで実装できたんです。 最終日はプレゼンテーションとデモンストレーションをするのですが、前日は徹夜でロボットの外装を作っていました。メンバーはみんな、外装は時間がなければやらなくていいと言っていたのですが、私が15案くらいデザイン画を描いたらそれを見たひとりが興味をもってくれたので俄然やる気になって。サファリパークというコンセプトに合わせてふわふわの犬のような外装にしました。デモンストレーションでは遠隔でロボットを操作するので、どのチームもうまく動かないなどトラブルがあるのですが、私たちのチームのロボットは変な動きをしても外装のおかげで逆に可愛かったのではと思います。審査委員から「癒された」というコメントもいただきました。

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実際の設計図と加藤さんが仕上げた愛らしい外装。ぬいぐるみの制作経験はなかったが、早い段階でイメージができていたため、素材はあらかじめ購入していたそう。

同じプレゼンでも理科大生と多摩美生とでは考え方が全然違うんだ、という気づき


―― 他大生と一緒に活動するのは貴重な経験ですね。合同チームならではの気づきもありましたか?
装置の構造を考えたときもそうですが、理科大生は考えをシンプルにして実装しやすく設計するのが得意で、私は手を動かして形にするのが得意だと気づきました。みんなの得意な部分がうまくかみ合って「通じ合えた!」と感じる時もあり、うれしかったですね。また、プレゼンテーションの進め方や考え方の違いも興味深かったです。理科大生のプレゼンは、データを示して穴がないように理詰めでいこうとするんだなと感じましたし、ビジネスコンテスト向けのプレゼン方法もあるんだと知りました。私の場合はエンターテインメント的というか、惹きこんで気持ちよく聞かせようとする感じで、同じプレゼンでも説明で重きを置く部分が違ったんです。そういった違いを生かし、最終日のプレゼンでは、序盤の構成は私が担当して聴衆の関心を引き、後半のデータの説明や実践は理科大生がするといった流れも考えました。 おもしろかったのは、何を話しても「さすが美大」と驚かれたことです。理工系の大学の授業は1年〜3年生の間、基本的にずっと情報をインプットする学びらしいのですが、多摩美の場合は1年生からインプットだけでなく、アウトプットして学びますよね。理科大生によると、インプットを試すテストは及第点を取れていればよいそうなんですが、美大生はその間もアウトプットが評価されるので、講評会に出す作品は自分にとって120%のものを目指す。及第点という考え方はないんです。だから基本的な学びのスタンスが違うんだなと感じました。

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カラオケ店でプレゼンの準備を行っている様子。短期間に結果を出さなければならないハッカソンだからこそ、お互いの得意分野をよく理解し、適材適所が結果につながった。

ロボット工学も生物学もプロダクト制作も全部できそうだと思って多摩美に来た


―― 加藤さんはハッカソンに限らず、学科内の成果展「屋台トーク」での作品展示や産官学連携プロジェクトなどにも積極的に参加されていますね。今後はどのような活動を目指していますか。
先生からは「一番やりたいのはどれ」とよく言われます。もともとロボット工学にも生物学にもプロダクト制作にも興味があり、プロダクトデザインに所属したら全部できそうだと思って多摩美に来ました。領域を横断したり、型にはまらずにやっていけるのが美大かなと思っています。プロダクトデザイン専攻ではスタジオ2で学んでいますが、ここで言われるのが「答えはひとつじゃない」ということです。まだ問題として認識されていないものを自分で見つけてきて、いろんな視点で柔軟に考えて解決しようという学びです。ですので、私もどんどん外に出て、デザインの領域にとらわれず視野を広げたいです。将来は発明家になりたいと考えています。社会や人のためになるような、社会によい影響を与えるような発明をしたいです。


―― ありがとうございました。

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ずっとつくりたいと思っていた友禅染を「1ヶ月でつくる」と決めてチャレンジしたときの作品。このときも周囲から「無理すぎる」と言われていたが、職人に尋ねるなどして独学で習得し、半身だけとはいえ制作することができた。蒸し器もお手製。

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学科内の成果展「屋台トーク」にて展示した「悪路をすすむ」がテーマの作品。シロクマの足裏をヒントにした、氷の上でも滑らない靴。ラクダの足裏をヒントにした、砂漠でも歩きやすいサンダルなどを提案した。

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